色も輝度も多様多種なLEDが手に入るこの頃。工作でLEDを使う機会が増えた。LEDはダイオードのため、電圧降下が少しでも大きくなると流れる電流が何倍にも大きくなることがあり、LED自体の個体差、電源電圧や電流制限抵抗のばらつきが過電流を招き、LEDの不可逆的な破損を導く恐れがある。
データシートには順方向電圧の記述があるが、例えばOSTCWBTHC1S(1WパワーLED)の赤色に150mA流れるときの順方向電圧は2.0V〜3.0Vと開きがある。典型値は2.5Vとあり、秋月電子のwebサイトの順方向電圧の記述も同じ値だ。しかし実際に測定した結果から、2.5V印加で絶対定格電流200mAを超えてしまうことが分かった。(赤に限らず青、緑も同様)詳しくは以下に記述があるが、順方向200mAのときの順方向電圧は2.2V程度だ。
要は典型値の意味に気をつけよ、ということだ。電圧の典型値は絶対定格電流を超えない電圧という意味ではない。
LEDはダイオードなので順方向電圧のわずかな変化が順方向電流の大きな変化となるのはやむを得ない。本測定の結果では0.1Vの電圧上昇で電流が5倍になる場合もあった。
パワーLEDを多用するにあたり、1個数百円のパワーLEDが壊れるのは避けたい。そこで、オリジナルペンライト製作のついでに各種LEDのI-V特性(電流電圧特性)を調べてみた。結果はロットに依存することは言うまでもない。実際に購入してLEDを使用する前に実物で計測することを勧める。
●測定方法
可変電圧電源をLEDに接続し、電圧を変化させ電流を読み取った。ただし電圧、電流はLEDの絶対定格を超えない範囲とした。
●測定対象と測定結果
型番 メーカー | 発光色 消費電力 | 外見 | I-V特性 |
OSTCWBTHC1S OptoSupply | RGB 1W |  | グラフ | csv |
OSTCXBCBC1E OptoSupply | RGB 6W |  | グラフ | csv |
不明 EPILEDS | RGB 3W |  | グラフ | csv |
不明 EPISTER | RGBW 12W |  | グラフ | csv |
OSTA1513A OptoSupply | RGB砲弾型 小電力 |  | グラフ | csv |
OSTA71A1D-A OptoSupply | RGB角型 小電力 |  | グラフ | csv |
●着眼点
各LEDについて、I-V特性のほかに駆動標準電流(以降、Ifと略す)を流すのに必要な電圧(以降Vfと略す)に注目してみる。
結果、実測のVfがデータシートのVfの範囲を外れている型番が見られた。うっかり典型値電圧を印加すると、最悪LEDが不可逆的に壊れる恐れがある。(二度目だが、ロット依存があることを忘れないこと)
●OSTCWBTHC1S(1W RGB)
秋月電子で1個250円程度で買える手ごろなパワーLED。冒頭で書いたように、RGBいずれも順方向電圧の典型値を印加した場合、絶対定格電流を超えてしまう。余談だが、このLEDはRGB同時にVfで1分ほど駆動させるとヒートシンクがかなり(ぎりぎり触れらるほど)熱くなり、別途放熱対策があるとよいだろう。
色 | 順方向電流が150mAのときの順方向電圧 [V] |
データシートの値 | 本測定の結果 |
最小値 | 典型値 | 最大値 |
Red | 2.0 | 2.5 | 3.0 | 2.16 |
Green | 3.0 | 3.3 | 4.0 | 3.12 |
Blue | 3.0 | 3.3 | 4.0 | 3.14 |
●OSTCXBCBC1E(6W RGB)
秋月電子で1個400円程度で買えるかなり高出力なパワーLED。Ifで動作させる場合、発熱が大きくファンが必須と思われる。10秒程度の通電でヒートシンクが触れないほど熱くなった。このLEDの場合、データシートの順方向電圧最小値でさえ絶対定格電流を超えてしまう。意外なことに、IfがOSTCWBTHC1S(1W RGB)の5倍にもかかわらず、Vfが0.1V程度しか差がない。
色 | 順方向電流が600mAのときの順方向電圧 [V] |
データシートの値 | 本測定の結果 |
最小値 | 典型値 | 最大値 |
Red | 2.5 | 3.0 | 3.5 | 2.19 |
Green | 3.5 | 4.0 | 4.5 | 3.16 |
Blue | 3.5 | 4.0 | 4.5 | 3.33 |
●EPILEDS パワーLED(3W RGB)
秋月電子では取り扱いがなく、Yahooで出店しているとあるショップでのみ入手可能なパワーLED。webサイトには「Vf」と表記があるが、この値が何を表すか(Ifを流すのに必要な順方向電圧か否か)の記述がない。また、Ifの値の記述がない。仮にIfが絶対定格より50mA低い300mAとすれば、本測定で得たVfは、赤についてはデータシートの順方向電圧範囲内に収まっているが、緑と青は最低値以下である。
色 | Vf [V] | 本測定の結果 (順方向電流が300mAの ときの順方向電圧) |
データシートの値 |
最小値 | 最大値 |
Red | 2.2 | 2.4 | 2.35 |
Green | 3.2 | 3.4 | 2.93 |
Blue | 3.2 | 3.4 | 3.08 |
●EPISTER パワーLED(12W RGBW)
EPILEDS パワーLED(3W RGB)と同じショップでのみ入手可能なパワーLED。筆者が見たパワーLEDの中では、LEDディスクリート(LED単体)単体で最も高出力だ。加えて、RGBWの4色が発行可能。4色フルパワー発光時に十分な放熱が必要なのは言うまでもない。
このLEDも、webサイトには「Vf」と表記があるが、この値が何を表すか(Ifを流すのに必要な順方向電圧か否か)の記述がない。また、Ifの値の記述がない。仮にIfが絶対定格より100mA低い600mAとすれば、本測定で得たVfは、赤と白についてはデータシートの順方向電圧範囲内に収まっているが、緑と青は最低値以下である。
データシート上は青、緑、白の「Vf」は等しく、これらのi-v特性は似ていると思わせるが、本測定の結果では青と緑は似た特性だが白は高電圧側に0.2V程度シフトしている。
色 | Vf [V] | 本測定の結果 (順方向電流が300mAの ときの順方向電圧) |
データシートの値 |
最小値 | 最大値 |
Red | 2.0 | 2.5 | 2.24 |
Green | 3.2 | 3.4 | 3.05 |
Blue | 3.2 | 3.4 | 3.04 |
White | 3.2 | 3.4 | 3.25 |
●OSTA1513A(砲弾型小電流LED)
秋月電子で1個50円程度で買えるLED。筆者は砲弾型フルカラーLEDの定番として、大人買いした。このLEDもデータシートの順方向電圧最小値でさえ絶対定格電流を超えてしまう。
色 | 順方向電流が20mAのときの順方向電圧 [V] |
データシートの値 | 本測定の結果 |
最小値 | 典型値 | 最大値 |
Red | 1.8 | 2.1 | 2.6 | 1.78 |
Green | 2.9 | 3.1 | 3.6 | 2.80 |
Blue | 2.9 | 3.1 | 3.6 | 2.74 |
●OSTA71A1D-A(砲弾型小電流LED)
秋月電子で1個50円程度で買えるLED。角形フルカラーLEDの定番。このLEDも赤以外はデータシートの順方向電圧最小値でさえ絶対定格電流を超えてしまう。データシート上のVfはOSTA1513A(砲弾型小電流LED)と似た値だが、赤以外は0.2〜0.3V程度差がある。
色 | 順方向電流が20mAのときの順方向電圧 [V] |
データシートの値 | 本測定の結果 |
最小値 | 典型値 | 最大値 |
Red | 1.8 | 2.0 | 2.4 | 1.83 |
Green | 2.8 | 3.2 | 3.6 | 2.49 |
Blue | 2.8 | 3.2 | 3.6 | 2.69 |
●最後に
実測のVfがデータシートのVfの範囲を外れている型番が見られた。うっかりデータシートの順方向電圧典型値を印加すると、最悪LEDが不可逆的に壊れる恐れがある。(二度目だが、ロット依存があることを忘れないこと)実際にLEDを使用する場合、実物で測定すること。
電流を制限する方法は、LEDに抵抗を直列に挿入する方法がポピュラーだが、定電流回路が使用できればより安心だ。世には
定電流制御だけでなく電流のPWM制御も可能なICが存在し、パワーLEDの制御にも使用できることを確認した。有力な選択肢になりうるだろう。
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