TEMPEST under the ground



原曲 : 「東方地霊殿」 より 「廃獄ララバイ」  「死体旅行」 「業火マントル」
作曲 : ZUN ( 上海アリス幻樂団 )
アレンジ : chiquchoo ( Presence∝fTVA )
  

楽譜音源


 最早押しに押されぬchiquchooのエースとなった楽曲です。まごうことなき東方地霊殿BGMのピアノアレンジでありながら、クラシックの界隈にも十分に通じる曲構成と、適度な難易度からの演奏効果を兼ね備えた、正にこういう曲を待っていた!と言える東方クラシックピアノアレンジです。ベートーベンのテンペストソナタ最終楽章を下敷きに、東方地霊殿の各旋律を用いて本格的なクラシックアレンジを構成しています。
 この曲の最大の特徴は、同じ主題が間をおいて何度も登場する“主題再帰”を徹底的に活用した構成にあります。初めて聞く旋律は、せいぜいただ聞くのが精一杯です。しかしそれが繰り返されれば、初出の旋律も既知の旋律となり、つまりは知っている旋律で曲を把握することができます。するとそこに色々な変化や、その他の追加要素が入る余地が生まれてくるのですね。
 充実した構成は、この曲に恐ろしい「使い勝手の良さ」を与えています。一見すると微妙な旋律の弾き分けが要求されそうで厄介そうな曲に見えますが、実際は正反対で、構成が演奏のクオリティをサポートしてくれるという、他の曲にはない特徴を持っています。加えて、基本的には曲の性格通りの弾き方をすれば力を引き出せるので、演奏の際の表現の面でもむしろ取っつきやすい曲です。この結果、「それなりに弾けば確実にそれなり以上に鳴ってくれる」曲であり、またクラシック的な楽曲性と東方アレンジとしての楽曲性が同居しているために、どんなシーンで弾いても他の曲に見劣りすることがないという、驚異的な汎用性をも手に入れています。何を弾くか迷うような演奏機会にぶち当たった場合、この曲を選んでおけば大体何とかなりますし、とにかく一度弾いてみるのをお勧めする曲です。

【楽曲解説】

 詳細な解説は、専用のページを用意していますのでそちらをどうぞ。
 ざっくりと解説しますと、この曲には3つの“ヤマ”があります。2:33〜3:02、4:11〜4:40、4:40〜5:12の3箇所。うち最初のヤマは、ヤマに至るまでの導出こそが真の見せ場です。〜1:30までで2つの旋律を提示して、そこからはその2つの旋律に死体旅行をちょいちょいと混ぜて膨らませていき、その頂点でヤマへと繋ぎます。この部分にはソナタ的な処理が多く使われています。
 2つ目のヤマは、最初のヤマのそれを踏まえた導出によって導かれます。3:10で一度最初の旋律に戻ってきますが、そこから唐突に入る3:45〜4:01の新旋律に、最初のヤマの直後と同じ旋律で繋ぎを挟むことで、一度目とは全く異なりながらも1曲としての統一感あるアプローチでヤマに持ち込まれます。ヤマ自身も最初から突っ走っている1度目と対比して、こちらは徐々に厚みを増していって後半にその本領を発揮します。
 そして第3のヤマは、それまではずっと繋ぎの旋律であった部分が満を持して表に出てきます。そして途中からは第一のヤマの導出部分で用いた技法なども引き出しつつ和声的な変化も入れることで、正に最後の山に相応しいものとして最後のメインの旋律に繋ぎます。
 3つのどのヤマも、そこ以前までの流れを生かして構成されていることに気づかれると思います。曲内に登場する各旋律が、曲内である意味“歴史”を作りつつ曲が進んでいくのですね。
・詳細な解説は、専用のページをどうぞ。

【演奏の手引き】

 この曲は、とにもかくにも一度弾いてみて、持ち曲としておくといい曲です。先述の「何を弾くか迷うような演奏機会にぶち当たった場合、この曲を選んでおけば大体何とかなる」というのは私の実話で、ほんとに何度助かったことかw
 難易度的にはほぼテンペスト第3楽章と同じくらいと思って頂いて構いません。実際はテンペストに比べると音が複雑だったり、ジャンプがあったりしますが、この辺りは意外と“何とかなります”。確かに転調を連発して山のように臨時記号が出てくるといかにも難しいように感じますが、音を覚えてしまえば逆に黒鍵がコンスタントに入ってくる分、形によっては弾きやすくさえなります。演奏効果の向上を演奏テクニックではなく譜読み段階の苦労で確保できる という一面もあったり。
 私の個人的な思いとしても、やはりこの曲はとにかく“弾いてほしい”の一点です。演奏可能性の証明に関しては、私及び私以外の複数の人によって確認されていますし。単純にピアノ楽曲としても通用するような曲が、実は東方の同人アレンジ、ええ、なかなか面白いシチュエーションではありませんか♪

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