LED向け定電流IC NJW4616について



2016年11月27日

ここで説明した通り、LEDの順方向電流は順方向電圧に敏感であり、電流制限抵抗で一定の順方向電流を得るのは難しい。加えてパワーLEDの場合、電流制限抵抗の発熱やエネルギーロスが無視できない。

パワーLED向け定電流回路は秋月電子から何種類か入手できるが、この回路は出力電流やPWMのduty(デューティー)比を外部からコントロールできないため、任意の色を選択可能なペンライトのような用途には使用できない。

電流値の波高値は一定、duty比は外部入力で制御可能なIC、モジュールがないかと探したところ、秋月で見つかった。新日本無線のIC、NJW4616だ。早速入手し、望みの動作となるか調べた

このICの特性は以下の通り。

1・電源VDDは2.5V〜40V
2・出力電流はI_LEDは20mA〜300mAで、図2右下の式に示すように0.2V/Rsで決定される
3・出力電圧は40V以内あるいは電源電圧以内なので、複数のLEDを直列に接続した回路でも使用できる
4・I_LEDはEN/PWM端子がONの場合のみ電流が流れる。

4はこのICの最大の特徴。上述のごとく、筆者が望んでいた機能。2について、最大電流についてはパワーLED1個駆動に十分な値だ。300mA流したい場合、Rsは0.2/0.3=0.667Ωとなり、精度が高い抵抗が必要になりそうだ。

このICは表面実装パッケージSOT89なのが注意点。図1に示すように、2.54mmピッチのユニバーサル基板で縦横3個分のホールを使用してはんだ付け可能。基板への直接はんだ付けを避けるなら、秋月の変換基板を使用するとよいだろう。いずれにしても、IC本体の寸法が小さいのではんだ付けに器用さが必要。




図1 2.54ピッチ基板に直接はんだ付けした4個のNJW4616(左は単四乾電池)


今回の測定で使用した回路である、NJW4616の応用回路例を図2に示す。




図2 LED向け定電流回路例

今回の測定条件は下記とした。

・電源電圧VDDは手持ちの安定化電源の5V〜20V
・出力電源を決定する抵抗Rsは1Ω(つまり出力電流波高値は200mAとなる)
・LEDは以前I-V特性を測定したEPISTERの12WLEDの白色を1個使用する
以前の測定結果によると、200mA流す場合順方向電圧は3.0V程度必要)
・LEDに直列に接続した1Ωの電流測定用抵抗器の電圧降下を電流値に読み替える
(上述のように順方向電流3.0VのときのLEDの抵抗値は15Ω程度であり、図2のような定電流出力回路で1Ω抵抗の挿入は測定結果にほとんど影響ないと思われる)
・LED制御用のPWM信号は波高値 5V、周波数 120Hzとし、duty比は1:1あるいは1:16とする
(LEDの制御に使用する程度の周波数、duty比とする)


以上の条件で以下3点を測定した。


A ・ EN_PWMを常にONとし電源電圧VDDが5〜20Vに変化した場合の出力電流 I_LEDの値
(電流波高値が200mAから変化しないことの確認)
B ・ 電源電圧を5Vとし、EN_PWMの入力のduty比を変化させた場合の出力電流I_LEDの値
(EN_PWMのパルス立ち上がりに対しI_LEDの応答が十分に早いことの確認)
C ・ EN_PWMのパルス立ち上がりに対するI_LED立ち上がりの遅れ(Bの詳細な測定)





A ・ EN_PWMを常にONとし電源電圧VDDが5〜20Vに変化した場合の出力電流 I_LEDの値

出力電流波形I_LEDを図3に示す。



図3-1 VDD=5Vのときの出力電流波形 (縦軸:50mV/div 横軸:20ms/div)


(50mV/div)

図3-2 VDD=10Vのときの出力電流波形 (縦軸:50mV/div 横軸:20ms/div)




図3-3 VDD=15Vのときの出力電流波形 (縦軸:50mV/div 横軸:20ms/div)




図3-4 VDD=20Vのときの出力電流波形 (縦軸:50mV/div 横軸:20ms/div)


図3-1〜3-3に示す通り、VDDが15V以下では出力電流は縦4divで一定なので波高値は200mAで一定だ。ノイズも少ない。ただ、図3-4に示すようにVDDが20Vの場合、duty比が1:1で10Hz程度でLEDが点滅した。おそらく、ICの発熱によって自動出力遮断が働いたと思われる。(実際、ICに触れるとかなり熱かった) パワーLEDに定電流を流す場合、電源電圧は10V以内に抑えると安全そうだ。



B・電源電圧を5Vとし、EN_PWMの入力のduty比を変化させた場合の出力電流I_LEDの値

出力電流波形I_LEDを図4に示す。



図4-1 duty比1:16のときの入出力出力波形(黄色:PWM入力電圧 赤色:出力電流 横軸:1ms/div)




図4-2 duty比1:1のときの入出力出力波形(黄色:PWM入力電圧 赤色:出力電流 横軸:1ms/div)
※入力波形はPWM生成マイコンの都合上瞬間的にOFFとなっている


図4-1、図4-2に示すように、duty比が1:16の場合でも入力に対する出力波形に遅れは見られない。(図4−2のような数10μs程度の入力の瞬断にも追随している)つまり遅れは数100μs以内に収まっている。LEDのPWM制御に問題なく使用できそうだ。



C ・ EN_PWMのパルス立ち上がりに対するI_LED立ち上がりの遅れ(Bの詳細な測定)

出力電流波形I_LEDを図5に示す。条件は図4-1と同じく、duty比1:1とした。



図5 duty比1:16のときの入出力出力波形(黄色:PWM入力電圧 赤色:出力電流 横軸:5μs/div)


図5に示すように、入力電圧が立ち上がった直後10μs間は出力電流は多少パルスノイズを発する程度で定常状態へは遷移しない。10μs直後から出力波形が立ち上がり、少しオーバーシュートした後 センターから5div(25μs)でほぼ定常値 200mA となる。図4で入出力遅延は数100μs以内だと推定したが、ほぼその通りだ。

データシートの記述では遅延は11μsとあるが、おそらく入力立ち上がり開始 と出力立ち上がり開始の時間差だろう。

以上より、パワーLEDのPWM制御に使用できそうなことが分かった。ノイズも少ない。注意点として、図1の結果でも考察したように電源電圧を高くしすぎない(出力電流を200mAとする場合10V以内とする)ことだろう。ノイズ対策を行えばモーターの制御にも使えそうだ。




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