東方幻想曲



原曲 : 東方Project
作曲 : ZUN ( 上海アリス幻樂団 )
アレンジ : chiquchoo ( Presence∝fTVA )
  

楽譜音源


 chiquchoo初の本格アレンジですね。ついに出来たかー、という感じ。原曲11曲、演奏時間10分の大曲です。アルトノイラントの弘世さん情報によると、単曲としては最長クラスの東方アレンジとの事で、長けりゃいいという訳ではないのですが長くなってしまいました。曲構成としては起承転結の4章(章といってもそこで演奏が一時途切れる類の区切りではない)構成を持つ幻想曲形式で、それぞれの章で充分な展開をしようとした結果の長さです。レソラドラソ(ニ短調の場合)の旋律でまとめているのであまりそのような感じはしないですが、結構好き勝手に遊んで幻想曲しています。
  この曲の発端は…確か去年秋くらいでしょう。当初は東方の主題レソラドラソを持つ曲を並べていって1曲にしようという趣旨で始めて、やはり山場を持った構成は重要だということで起承転結の構成はかなり早い段階で決定しましたが、特に承の部分でなかなかうまい接続が思いつかなかった覚えがあります。というよりなかなか幻想曲にならなかったw。その辺りが解決されてからは今度は楽譜を起こすための時間に恵まれず、ゴールデンウィークを使って一気に進めて完成させました。それからは微調整と、その途中で『地霊達の起床』(地霊殿)が入って完成に至ります。
  原曲11曲は紅魔郷から地霊殿までの全ての上海アリス作品7作品に加え書籍版文花帖まで引っ張り出して、それでもなお承なんかで同じ曲に繰り返し頼っていたり。ただこれ以上増えるとまとまりにくくなるので、この辺りがいいラインかなとは思っています。なおかなりのマイナー曲がばんばん出てきているので、「こんな曲あったっけ」となる方が多いと思われます。というより全ての原曲が浮かんだ方はご自身の東方歴を大いに誇って宜しいかとw。そうやって原曲を当てつつ聴くのもありですね。逆に東方を全く知らない方にとってもある意味面白いかも。
  英語での副題は勿論K. Kuroyaさんの大曲、『Fantasia on themes from "Atrach=Nacha"』へのオマージュで付けています。通称アトラク=ナクア幻想曲と呼ばれるこの曲の構成は一見、ただ原曲のアレンジをつないだように思えるのですが、ちゃんとそれぞれが“アトラク幻想曲”の中での構成要素としてきちんと役割を果たしているのがすごい所です。ですが実を言うと初めてこの曲をちゃんと聴いたのはそんなに前ではなく、もうその頃には東方幻想曲の起承転結構成のプロットが固まってしまっていたので、東方幻想曲のコンセプトはこの曲と似てはいますが殆んどこの曲の影響は受けていない私のオリジナルのものです。しかしながら似たような趣向を持つこれだけ素晴らしい大曲が存在する、という事実は、私のアレンジとしては未曾有の大曲となることが確実となりつつもなかなか進んでいかないこの曲のアレンジ作業の中で、支えとなったのは確かです。この前代未聞のアレンジがちゃんと完成して曲になってくれるのか疑心暗鬼になっていた時に、アトラク幻想曲の存在そのものが持つ意味は大きかった…。
  しかし未だに10分の曲作った実感がありません。ああ、こんなにアレンジしたんだー、と何だか他人事のよう。というより自分如きが何でここまで作れたのか不思議でしょうがないw。もう二度とこんなアレンジできないだろうなー。でももう1回、いや2回でも3回でもやってみたい…かも。楽しかったですから。


・各章説明

以後原曲名を[]で囲んで略します。

第1章 起

 最初はWin版東方の記念すべき最初の曲、[赤より紅い夢]でスタートです。もともと拍子が分かりにくい曲なので、リズムをかなり崩しています。しかしそれは2小節で早々と終了、[永夜抄]の中に[花映塚]の後半部分を入れた、この曲の基本形ともいえる部分に入ります。これが第1章の殆んどを占めるメインの部分。最初の章でこの曲の基盤ともいえる形をしっかりと示し、第2章ではここから発展させていきます。

第2章 承

 最初の曲がマイナーなのでびっくりするかもしれませんが、[花映塚 〜 after Higan Retour]です。書籍版のほうの文花帖から持ってきた曲ですが、音楽的にみるとここは第1章で示した基本形において[永夜抄]の部分を置き換えている部分になります。同様に次の部分では[花映塚]を[花の映る塚]に置き換えて…とそんな感じで進んでいくと思いきや、[天狗の手帖]に入った辺りからちょっと話が変わってきます。いつのまにか[地霊達の起床]のテーマまで入ってきた後、一度は[花映塚 〜 after Higan Retour]が戻ってきますが、[紅より儚い永遠]を軽くはさんで4拍子になったと思ったらこれは[妖々夢]。東方の主題を残して旋律が次々と移り変わる、この曲の中で最も『幻想曲』っぽい章です。

第3章 転

 色々と移り変わった第2章とは一転、第3章の姿勢は明確です。10分の大曲の山場に選ばれたのは[千年幻想郷]。その旋律は果たして充分に場を支配し、左手で高速アルペジオ、右手でオクターブで一気に鳴らされる東方主題の部分で最高潮を迎えます。
 その後は一転、[神は恵みの雨を降らす]のゆっくりとした旋律でを落ち着かせます。この部分が“結”のような感じさえするのですがさにあらず、まだ一山残しているのですが、それを引き立てるがために、この部分はあたかも曲の終わりのようにしているのです。

第4章 結

 さて今度こそ正真正銘の最終章です。一瞬第1章の再現かと思いますが、勢いのある[赤より紅い夢]が今度はそのまま引っ張って[花映塚]にバトンタッチ。[花映塚]でもその勢いは衰えることなく進み、最も盛り上がった所ですっと引き下がって本当のラストへ。
 最後はあっけないほどあっさり。幻想の世界の旅は終焉に至ります。


・演奏の手引き

 最低限の表現記号しかつけていません。ここまで長い曲でそれをやるのはあまり良いことではないとDenkoに言われましたw。ついている表現記号はアクセントやテヌート、或いは速度変化にしても殆んど局所的なもので、これも最低限しか書いていません。逆に言うとついている表現記号は必ずそうしてほしいものということです。それ以外でも必要だと思ったらどんどん付け足していいですよ。
 この曲は本当に自由に弾けます。最初の[赤より紅い夢]に限っても、思い切り勢いよく入るもよし、抑え目に入るもまたよし。実際私もかなり色々と表情付けを変えて弾いてみました。その結果どうしてもこうやって弾いてほしいという部分にのみ表現記号を付けたので、それだけは守りつつ、後は自由に弾いて演奏者の皆さんの個性を存分にみせて下さい。ただし何も考えずに適当に弾くのは絶対にやめて下さいね、曲が死にます。



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