アリスの狂気



原曲 : 「東方妖々夢」より 「ブクレシュティの人形師」 「人形裁判 〜 人の形弄びし少女」
作曲 : ZUN ( 上海アリス幻樂団 )
アレンジ : chiquchoo ( Presence∝fTVA )
  

楽譜音源


 アリスといえば、この界隈を代表する超多義語ですね。“『アリス』という言葉の考えられるだけの解釈を挙げなさい”なーんて訊ねると、その人がどんなものにどのくらい興味持っているかが一発でわかります。私も色んなアリスが思い浮かびますが、やはり“アリス”を人物名を超えて概念として定着させてしまったローゼンメイデンが印象的。あと最近だとARisかな。技術自体は最初は確かスタジオなんかで合成に使われている代物の応用なんだけど、それをこう使うかっ!!って。えー知らない人ごめんなさい。
 もちろん東方Projectのアリス、アリス・マーガトロイドも負けてはいません。旧作からの古参キャラだし、藁人形五寸釘のイオシスで一気に知名度も上昇、も副作用(?)で新参者に魔理沙と間違えられたりw。うーん、どういう意味で負けてないのか書いてる本人が怪しくなってきた ww。
 という訳でアリスのステージである妖々夢3面の2曲によりアレンジです。後半で『きらい〜きらい〜Loving〜♪』と歌っちゃた人には私自身も含まれますwww。『人形裁判』と言うより『“魔理沙は大変な(ry”の原曲』と言ったほうが通りが良かったり。そんなこの曲はちくちゅー/chiquchoo初のクラシックとの本格クロスオーバーを自称してるだけあって、なかなかいつもとはちょいと違う音造りになっています。実は部分的にRPAだったりして、RPA特有の響きを逆手に取りつつオリジナルパートとクラシックっぽいオリジナルパートとごっちゃ混ぜに。そんな感じなのできらい〜きらい〜と歌っていくと途中でリズム&メロディーが合わなくなるので悪しからず。(当たり前ですがそんなこと最初から想定外)その他にもこの曲には色々とありますね。旧版youの制作理由であり、一度だけ披露された幻のコーダに使われているちくちゅーお手製“疑似超絶技巧”をダシにしてたり。ですがその最大のものは、何といっても裏ストーリーの存在。楽譜にもなんか[ ]でくくっていろいろ書いてありますし。いや、この曲を考え付いた当初は普通にアレンジしていたのですが、どうも“味”がない、と思いまして、出来ていた曲調に合わせる形でサイドストーリーを作って、それに合わせて曲のほうも味をつけて、それに合わせてストーリー発展させて…を繰り返して相互作用で曲に味をつけていこうと。その辺りまでは正常だった…

・サイドストーリーを絡めた楽曲解説

 えーまず用意するのは東方でどう三角関係を扱ってもその2頂点になりうるwアリスと魔理沙です。今回は2人のスペルカード弾幕バトルを、ほぼアリスの側“only”で描いていきます。Denkoを初めとする魔理沙ファンの人ごめんなさい。
 さてそのアリスですが、どうやら何かの狂気に侵されているようです。何しろ自分から出かける事が少ないアリスが、魔理沙の所にわざわざ出向いてきてバトルを吹っ掛けるんですから。このアレンジで何度か出てくる“ラミレミドミシミ”の部分は会話シーンをイメージしているのですが、アリスがこんな状態だけに会話もいつもの東方の如くの暢気なものではなく、緊張感が漂っています。
 そんなこんなでバトルが始まってしまうのですが(会話シーンの内容についてはどうぞご自由に妄想して下さいな)、序盤戦と初めのスペルカードを過ぎたところでとうとう抑えきれないものが出てきてしまったようです。常に相手より少し上の力で戦う普段のアリスからは信じられない力押しのスペルカード。すると次の“ラミレミドミシミ”の会話シーンはいくら何でもアリスの異変に気付いた魔理沙が必死に小休止を挟んだ、というのが妥当でしょうか。会話シーン中も緊張感がものすごい勢いで登っていきます。そしてバトルは再開、残念ながら魔理沙による歯止めは効かなかったようで、いきなり最後の決戦の時、ラストスペル発動です。ラストスペルでは流石にいつもの人形による洗練された攻撃…途中まではそうだったのですが、ついにアリスが秘めてきた全てを解放、スペルは暴走の様相を呈します。しかしそんなことをしてただで済む筈もなく…結末は曲の示す通りです。結局アリスを侵した狂気とは何だったのでしょうか。ぶっちゃけるなら楽譜にはその答えは書いてありますが、すると一番最後の会話シーンでは2人は何を話したんでしょうね。最後のアルペジオはついに流れ出すアリスの涙でしょうか。Denko辺りが喜んで妄想しそう…ww。

・演奏の手引きを書く前に

 まず多少はどうでもいい話をするなら、先述したようにラミレミドミシミ…の部分は会話シーン、その他の部分はバトルシーンをイメージしています。バトルシーンの中でもアリスが正気を保っていていつもの洗練された戦いをしている所は右手にRPAを多用しています。原音通りだとちゃんと元のアリスっぽい音になるから摩訶不思議。この辺りは軽く頭に留めておくと場合によっては参考にならないとは限らないかも!?
 この曲でポイントになるのはラストスペルとその暴走(?)の部分です。ここで先述した“疑似超絶技巧”に少し触れるなら、限りあるテクニックで超絶技巧っぽい雰囲気を出すにはどうしたらいいか、というお話で、その1つの策が低音で濁りを出しながら上まで一気に登っていく左手。当然ちゃんとクラシック知っている人にはばれますし、響きが綺麗ではないので多用はできません。で、実は最初の私のyouのアレンジは、この技術を試すのにyouのサビ部分がもってこいだった為、それをコーダに組み込むべくyou全体をアレンジした事によって誕生した曲なのです。あーなんか懺悔してる。
 この曲では、ラストスペル暴走部分でそれが生きているといえば生きているのですが、使い方としてはyou旧版がダシにされたと言っていいほど意図が逆です。その前のラストスペル部分でほぼ同じ形を既に使ってしまってその変化形として登場させることで、擬似的な超絶技巧っぽさはむしろ排除しています。とともに浮き出てくるのは低音部の凄まじい濁り。逆にその前の部分では最低音を高くし、また低音部分で音の間隔を広くとることによって意図的に濁りが出にくくしていますし、さらに右手もRPAから3和音以上の多用へと変化させているのでその差はなおさら。この部分は革命(ショパンのクラシックピアノ曲)の左手の音造りも参考にしています。なお私は革命は何度となく聴いていますが弾けません、弾こうとしたことがないので。←ごく参考までに

・演奏の手引き

 サイドストーリーを作ってはいますが、そんなものなくてもちゃんと曲になるように作ったつもりなので、演奏される方もそのつもりで。サイドストーリーほど遊んでいる曲ではないです。
 最大のポイント、ラストスペルとその暴走部分では、その境目の切り替えが重要です。右手は綺麗に鳴らしている状態から力押しの強打気味へ、左手は…弾き方の変化と同じくらい、ペダルでどう左手の音を響かせるかがポイントになってきます。暴走以前の部分ではペダルは各小節の3音目(左手)くらいから踏み始めて、小節末まで維持して下さい。小節の最初から踏んでいると低温に濁りが発生します。好みとピアノの響き具合によっては最高音に達したところで踏み換えてもいいでしょう。暴走部分では“semple con ped.”の指示が入っています。これはずっと踏み続けでいろという訳ではなく、適宜踏み換えてもいいがペダルを切ることはないように、という意味なので誤解なさらず。思いきり狂気感を出すなら小節の頭だけの踏み換えで、厚みを出しつつ過度な濁りを抑えたいなら小節の頭と5音目の各小節2回の踏み換えがなかなか良かったり。いろいろ試してみて下さい。
 指示にもありますが、狂気は“秘めて”弾いて下さいねw。狂気丸出しで音を荒らす必要もなければ、もちろん叫び声を上げる必要もありません wwww。サイドストーリー中のアリスとこの曲のアレンジャー(←全ての元凶)がここまで狂気に侵されている以上、演奏者は冷静でないと結末は暴走以外の何物にもなりません。


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