Chinese Rhapsody 〜上海紅茶館



原曲 : 「東方紅魔郷」より 「上海紅茶館 〜Chinese Tea」 「明治17年の上海アリス」
作曲 : ZUN ( 上海アリス幻樂団 )
アレンジ : Denko ( Presence∝fTVA )
 

楽譜音源


 Denkoにとって去年の主力曲だった「Chinese Fantasy 〜上海紅茶館」は弾いてよし、聴いてよしで個人的にはいろいろな意味で大きな成功となった曲だった。しかし、何度も弾いていると気になってくる。和声(ハーモニー)が単純なこと。他にも、複数のメロディーの重ね合わせもっと使いたいなど、いろいろやるたいことが出てきた。もう1回、上海紅茶館のアレンジをしたくなってきた。
 そんなわけで、思いつくだけ編曲パターンを書いてみた。スケッチだけで20を超えている。こいつらを無理やりつないだ。曲のまとまりの悪さの原因はこの手法なのは間違いないが、それにしてもひどい。Chinese Fantasyと同様、上海紅茶館で明治17年をはさむという単純な構成だからまだ1曲にまとまっているが、全部通して聴くと 「いろいろなアレンジ手法が熱帯のジャングルのように繁殖しすぎている」感じがしてならない。おかげで、9分387小節の大曲という感じがしない。
 Denkoの初期の作品「夏影 variant piano arrange」も思いつきの連結で作った曲だが、ここまでバラバラ感はなく、9分の大曲らしく感じられる。やはり旋律をひとつにしぼったのがよかったのか。
 そう愚痴を言っていても始まらない。作ってしまったなら、聴いていって好きになればいい。クラシック曲というのはそういうものだ。
 とりえず、この曲でいろいろな手法を試せたのは大きかった。オリジナルで作った前奏、間奏、対旋律の絡み、調性感の希薄化など。その中でも特に大きかったのは、「明治17年の上海アリス」の旋律を完全解体して再構築、原曲と全く異なる雰囲気にできたことだ。(5分22秒以降)ここまで変形されると、原曲が何なのか分かりにくいだろう。しかし、中間部は3拍子で統一したかったので原曲が分かることより変形を優先した。この中間部、実はショパンの某曲とそっくりなのだ。分かる人はすぐに分かってしまうだろう。
 この曲で他に変わった点を挙げるなら、調性だろうか。楽譜上は、384小節全てフラット2で書いてある。実音上でも、基本的にト短調だ。中間部の明治17年の部分も。そう、本格転調(曲の複数のテーマを調を変えて提示する)がないのだ。東方の原曲はテーマが変わると高確率で転調するが、それとは対照的だ。この曲は一時的に違う調に行くこともあるが、すぐに他の調へ移ってしまう。いずれはト短調に戻る。本格転調に頼ってきたDenkoがそれを使わずに9分の大曲を飽きずに(?)聴かせ得ることが証明できた。
 この曲は聴く側としては面白いだろうが、演奏する側としてはつらいだろう。前述のようにいろいろなアレンジ手法が出てくる。つまり、同じようなフレーズが出てこないということ。片っ端から全部覚えなければならない、初見で弾ける場合を除き。その上、十度の同時打鍵や弾きにくいアルペジオが複数。アレンジャーDenkoの手には負えない・・・


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