鳥の詩 for the left hand alone



原曲 : 「AIR」 より 「鳥の詩」
作曲 : 折戸伸治 ( Visual Art's )
アレンジ : Denko ( Presence∝fTVA )
協力 : ちくちゅー ( Presence∝fTVA )
  

楽譜音源


 鳥の詩といえば、名作が多いkeyの曲の中でもとりわけ美しい曲。夏影とともに、Airを代表する曲となっている。クラシック系のピアノ編曲ではクロヤ氏の「Piano Sonata No.2 'Reminiscences of AIR'」が有名だ。楽譜が公開されているので、Denkoもそのアレンジの第一楽章を弾いてみた。

 難しい・・・。同人音楽のトップピアニスト、あかみ氏のようには到底弾けそうもない・・・と落胆していたところ、面白いことに気付いた。このアレンジ、前半部分は専ら左手で主旋律をとっている。ひょっとしたらこの編曲を参考に左手オンリーアレンジができるのではないか。そう思って左手だけで弾いてみた。

 なかなかいい感じだ!こいつを詰めれば演奏会に出せるようなアレンジ作品ができる!手ごたえあり。夏影 variant piano arrangeのときと同様にちくちゅーの力を借り、2007年の9月終わりに完成し、同年10月、名古屋大学ピアノ同好会で初演した。

 さて、曲の中身に移ろう。楽譜を見てまず目に入るのは、Ad libtum(テンポ、表現は自由に)である。当初はModerato(中ぐらいのテンポで)にしようと思ったが、Denko自身がテンポどおり弾けるか怪しいと言う問題が発生し、もっと遅めに設定することにした。しかし、このアレンジはどんなテンポで弾いても音楽的に成り立つことに気付き、思い切ってテンポも表現も奏者に任せることとした。そのため、楽譜全体を見回してテンポ指示や演奏指示、強弱記号やアーティキュレーションがほとんどない。プレイヤーによる解釈の違いも楽しめるような楽譜になったと思っている。上のWMVやWMAを再生して分かるとおり、Denkoは幾分遅めに弾いた。悲しいことにテクニック的な問題のためなのだが・・・ もっと快活な演奏が現れることを期待する。

 和音の構成、リズムなどは前述のクロヤ氏の作品の影響が強い。特に第1テーマ(サビと呼んだ方がいいか)で顕著だ。♯5の第2テーマはシンコペーションを多用してある。ベースの跳躍が少し厄介。続く♭5のテーマは特に立ての響きに重きを置いている。他のテーマに比べて、割合楽な部分である。53小節目からは第1テーマの再現であり、調性上は冒頭に戻るわけだが、この作品では直前と同じく♯4とした。原曲と同様に復調すると、51小節目の和音と52小節目の旋律とが対斜を起こす。鳥の詩の特徴のひとつと言える部分だが、あえて復調しなかった。1回目と差を出したかったからだ。

 再現部はちくちゅーのアイデアが詰まっている。高音部で和音をたたいた後低音部のベースまで飛ぶのは、Denkoが全く思いつかなかったもののひとつ。演奏効果は高いがベース着地が難しい。手が左右に飛び回るのがこのセクションの特徴で、特に66小節目からは50cm以上を何往復もする。最後の和音を弾ききったところで、もうDenkoの腕はクタクタだ。

 最後に、この作品の位置づけを考えてみた。左手アレンジはまずクロヤ氏の「Summer's left」(夏影の左手アレンジ)があり、次にきりね氏の「左手のためのCLANNAD編曲集」が出た。Denkoの鳥の詩はそれに続くものと言うことになる。無論、クロヤ氏の「Piano Sonata No.2 'Reminiscences of AIR'」がアレンジの出発点になっている。


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