夏影 variant piano arrange



原曲 : 「AIR」 より 「夏影」
作曲 : Key ( Visual Art's )
アレンジ : Denko ( Presence∝fTVA )
協力 : ちくちゅー ( Presence∝fTVA )
  

楽譜音源


 Denkoがアニメ、ゲーム音楽のアレンジをしようと思い立ったのが2006年の夏。
 同年秋、さらにアレンジ曲を増やした。「AIR」、「Kanon」、「ひぐらしのなく頃に」、「東方」など。その中でAIRの夏影に目をつけ、好き勝手に改変して弾き始めた。これはおもしろい編曲ができそうだ!弾いて すぐに感じた。
 年を越し、ちくちゅーのアイデアを借りて完成。全部弾くと9分の大曲になった。以前のDenkoの自作と比べて、さらに即興性が強い曲となった。

追記 (2007年5月16日)

 アレンジの大枠は2月中にできていたが、ちくちゅーの協力で一部手直しをし、5月16日に楽譜が確定した。19日に開催されるファーストサウンズ(演奏会)で初演することとなった。ちくちゅーの手直しにより、いっそう完成度が高まった。特に7ページ目以降が洗練された。修正前のはもう演奏したくないほどだ。彼のおかげで「夏影 variant arrange」をここまで育てることができた。彼にこの場を借りて感謝したい。

 「variant piano arrange」は変奏曲風アレンジと解釈されたい。ちくちゅーの提案で作品名とした。variantとは「様々な」だとか「変化した」という意味があり、後述するように夏影のメインテーマが変化して出てくる。ただ、主旋律はそれほど変化していないので完全な(あるいは古典的な)変奏曲ではないと思っている。

 曲の各部のおおまかなな説明をしよう。

 冒頭は原曲そのもの。16小節までは原曲にできる限り近づけた。変奏曲で言えば「主題の提示」だ。ここで厳密な採譜をやってわかったのだが、8部音符の左手伴奏の4音目や8音目が内音でないところがある。(例・6小節目の左手の最後のF音)もし内音なら響きが単純になるところだが、作曲者の麻枝准氏はあえて外音を使うことで音に深みを持たせているようだ。

 17小節目からは第1変奏。変奏というほど変化していないので、別な呼び方がいいかもしれないが。楽譜では大して難しいようには見えないが、21小節あたりの左手のアルペジオの間隔が広めなので、意識して弾かないとテンポが落ちてしまうだろう。この「第1変奏」はアレンジを始めたときからあった。
 音価が半分となったアルペジオが現れた後、突然短三度上のG♭調に転調する。ここの接続が、実は今回のアレンジで一番難儀したところ。元調のE♭からG♭に連結するのは早い段階から決まっていたが、なかなかつなげずにいて、とうとう最後まで残ってしまった。何度も試行錯誤し、E♭調D度X度(F7)からG♭調のW度(C♭)への接続を思いついたのだが、減五度の進行なのであまりスムーズな進行とはいえないかもしれない。ただ、これ以上やってもいいアイデアが出ないだろうということで採用した。
 ここ29小節目から38小節目までは、♭3に戻してやると原曲の中間部に近くなる。♭6にしたので主旋律は黒鍵ばかりとなった。ベース音の関係上楽譜は3段になり、また左手の跳躍がやや大きい。余談だが、夏影の主旋律はヨナ抜きだ。29小節目以降、主旋律が黒鍵ばかりになるのはそのせいだ。

 39小節目からのメインテーマには副旋律が付く。46小節目の10連符で音程が上がった後に右手7連符、左手10度和音のフレーズが始まる。ここも曲をいじり始めてからあったフレーズで、弾いていて気持ちがいい。左手は10度を同時に打鍵することが望ましいが、不可能なら分散させてもよい。下向きの音階でピアノで一番低いG♭音まで落ちると、左手に主旋律が現れる。徐々に緩やかに、静かになる。幸福感でいっぱいになる。

 64小節目、突然同主調に転調し、短調でメインテーマが現れる。ここはいくらか唐突さがあるとおもしろいだろう。ショパンのスケルツォ2番中間部に見られる分散和音と同じものが現れ、直後に最低音のC♯がショッキングに鳴らされると、短調で熱いメインテーマとなる。ここから先が面白い部分だ。嬰ヘ短調、イ短調、ハ短調、変ホ短調と連続して短三度上に転調する。興味深いのが右手で、ファードファソーラー、ラーミラシードー、・・・・のように、「音のしりとり」のようになっている。これに気付いたのは偶然だった。左手で執拗なまでにオクターブの下行き音階を鳴らし、どんどんヒートアップ。フォルテッシモ(ff)で一度絶叫した後、さらにテンポが上がって盛り上がっていく。元の夏影のイメージはとっくにない。

 そして山場。コン フォーコ(熱烈に)という演奏指示が付く。行進曲風のリズムで変ホ短調の和音を何度もたたきつける。時折高音で旋風が吹き荒れる。retenutoで急にテンポが落ち、これでもかと思うほど低音をたたき、暴風が吹き荒れた後、属和音(B♭7)で絶叫。そしてピアノの最低音近くから最高音近くまで変ロ長調の音階で駆け抜け、頂上で音はぶっつりと切れる。

 91小節目からが地獄なら、110小節目からは天国だ。今までの熱を冷ますため、ピウ レント(よりいっそうゆるやかに)でメインテーマを出す。「癒し系」だろう。途中の急速な音階はショパンのいくつかのノクターンに出てくる。

 その後、オクターブで力強く夏影の主旋律が歌われる。直前でも夏影の主旋律は出てきていたが、こちらのほうが力強い音ではっきり鳴らされるので、元のテーマへの復帰はここからということになる。

 129小節目でフラットが3つ落ち、元の調(変ホ長調)に戻る。幾分落ち着いた雰囲気になる。前半の副旋律付きも再現される。次に某曲そっくりな(いや、ほとんど同じ)旋律が現れるが、これは遊びでつなげて弾いていたのをそのまま採用したから。もしミーファミレの次にミーシーファーと来れば某曲そのものになっていまう。

 145小節からは、主音(E♭)を保ちつつ半音上のホ長調(楽譜の表記上は変ヘ長調)に転調し、少々緊張感を出す。この手法はリストの「ため息」にも見られる。しかし、落ち着いた雰囲気だということに変わりはない。そして静かにコーダ。低いE♭音から<上っていき、分散和音でさわやかに終わる。夏空にすいこまれていくように。


暫定完成   2007年2月19日
楽譜確定   2007年5月16日
原曲      key 「AIR」 のBGM 夏影
演奏楽器    ピアノソロ
演奏時間   約9分


直前のページへ戻る

Presence∝fTVA Top