2年ぶりに自転車で和倉温泉へ



2008年10月2日&3日


 去年(2007年)の夏はスケジュールの都合上自転車での能登半島北上ができなかった。我々(筆者とM氏)は  フラストレーションがたまっていた。今年(2008年)の夏になる。特に何もすることがないまま秋の足音が聞こえてくる 頃になった。学校の休みは9月いっぱいで終わりなのに、なかなか予定がつかない。そしてついに、休みが終わって しまった。9月中に行けない可能性も想定の範囲内に入れ、9月中がどうしても無理なら10月中に2日間ほど金沢に 戻ればいいのではと話し合っておいたことを思い出す。来年までお預けは我慢できないので、10月2日から3日に 実行することとした。

 今年、筆者は大学4年で卒業研究中なので講義はない。2日間休むことは問題なかった。2日と3日にしようと 提案したのはM氏なので、もちろんM氏は都合がついている。日程的には奇跡的に(?)よかったのだが、問題は 天候だった。台風○号(号数は忘れた)が南西諸島から突然東に進路を変えて本州にやってきて、2日に石川県に 再接近(伊勢湾あたりを通過)という、意地悪さ。天気予報上は晴れだから問題なさそうだが、低気圧が南にあると 北風が吹くだろうという個人的な予想と天気予報の風向きの予報とが一致している。2年前の前回の旅のように 逆風は覚悟しなければならないらしい。

 前日夕方に金沢入りし、2日の朝6時に金沢を出発。もう秋分を過ぎているのでまだ空は暗め。加えて寒い。 上着を着てきて正解だった。それでも出発して30分以内は寒さを感じた。

 前2回と同様、車がろくに来ない大通りを走る。ただ今回は最初からは飛ばさなかった。寒い中いきなり激しく 体を動かすと後々つらいだろうという判断から。この時点で逆風はそれほど気にならなかったが、市街地を出て 開けたところから無視できなくなってくるだろう。

 森本、津幡を過ぎて本線車道は盛土になった国道159号を走る。七尾線が平行していてなおかつカーブがなく車も ろくに来ないからとても走りやすい。前回はこの辺から前方の空に黒々とした雲がただよっているを見てから 間もなく足止めという嫌な目にあったが、今回はそういう旅の邪魔者は一切見えない。いや、北風という見えない 邪魔者が少しずつ強くなっていくのを感じた・・・

 旧宇ノ気町、現かほく市宇ノ気の市街地に入る。和倉温泉を目指すなら今まで走ってきた国道159号をひたすら 進めはよいのだが、前々回以来、宇ノ気から国道259号が分岐するまでのおよそ10kmまでで何度も怖い目にあって きたので今回はあらかじめ調べておいた別な道(県道59号)を通ることにした。その怖いこととは、該当区間では 歩道が狭く車道を走らざるをえないために、トラックなど大型車にあおられたり、すぐ隣を抜かれることだ。抜かれるときに排ガスを ふきかけられたり逆風が吹いたりして体力を消耗するのが嫌だった。大型車は自転車旅行の敵だ・・・

 その県道59号は、宇野気の市街地は通勤通学時間帯で少し走りにくかったが、町を抜ければ歩道が広く走りやすかった。国道159号は砂丘の上を走っている感じだったが、こっちは林の中を走るような感じがした。多少勾配はあるが、国道159号と同じぐらい。今後はこの道を使うことにしよう。

 コンビニで休んで、国道159号と合流。ここからのルートは今までと同じ。北風はもう無視できるレベルではなかった。こげどこげどもスピードは上がらず。前回みたいな感じだ。あの時の教訓から、向かい風では無理をしないことにした。それにしても、景色が開けている分気が遠くなってしまう・・・

 2年前の帰りに雨で長い時間足止めを食らった宿東というパーキングを通過。今年は何事もなく進んでいく。このあたりは少し長い上り勾配があるが、下りもある。下りでは飛ばせるだけ飛ばす。逆風のため思うように加速できない。

 宝達志水町に入ると歩道がなくなる。宇ノ気からしばらくの区間と同様、大型車からの邪魔が入ってしまうことになるが、ここだけは他の道が見つからなかった。どうしても通りたくない場合、東の国道269号を通ることになるが、 羽咋の市街地を通る上走行距離が伸びる。それに、走りやすいかどうかも分からない。こればっかりはどうしようもないのかもしれない。

 金沢から七尾に至る国道159号に限らず、区間によって歩道があるかないかは、その区間が集落を通っているかどうかに関係しているようだ。集落の中を貫いていると、後から拡張が難しい。そのため集落がある区間では歩道が  なく道幅も狭いままのことがある。反対に原っぱのを貫く区間だと道路の拡張がしやすいので、整備されている区間なら歩道も車道も広い。

 金沢から35kmあたり、羽咋の市街地に一番近くなるあたりでなかなか進まなくなる。言うまでもなく北風のせいだ。 国道159号には起点からの距離標識がだいたい1kmおきに設置してあるが、1kmを消化するのにひどく時間が かかるように感じた。やっと1km減った、あとこれを30回近くも繰り返すのかと思うとまた気が遠くなった。

 次第に足が痛くなってきた。去年と同様だ。ここで無理をして走行を続けると脚をやられるという教訓から、残り 約10kmのところにあるショッピングモールで20分ほど休憩。七尾の近くにもショッピングモールができたとは、 能登半島も変わったものだ。

 十分脚が回復したところで出発。何としても12時半和倉温泉発の能登島行きバスに間に合わせようというのは 前回と同じ。あと15kmを1時間半で走れれば間に合う。平均時速10kmなら、トラブルさえなければ大丈夫だ。

 走り始めて思った。休憩前より走りやすい。疲労回復だけでなく、少し風が弱まったらしい。目的地の幾分 手前にして、ラッキーなことだ。

 七尾の市街地に入り、建物が増えれば逆風はほとんど無視できるようになる。そして国道159号の起点(国道 159号は金沢が終点、七尾が起点)である川原町のT字路に至る。もちろん今日の終点はここではなく6km先の 和倉温泉バスターミナル。国道159号を走り抜いたからといって喜んでいる時間はなく、ノンストップで七尾市内を 抜け、さらに北へ七尾線と並行な道を行く。七尾から先も一部歩道がなく、大型車の恐怖に襲われる。去年いくらか 歩道を整備したが、まだ歩道なしの部分も残っている。ここも別なルートを通りたい。

 12時10分、和倉温泉駅に着く。去年まではここに自転車を止めて能登島水族館に向かったが、バスは温泉街にも 入ってくるので温泉街まで自転車で行ったほうがいいことが去年分かっている。ここでも到着を喜ぶのをおさえて 温泉街へ向かう。

 そして和倉温泉バスターミナルに着いた。6時間10分かかったことになる。意外にも、途中1時間以上足止めを 食らった2年前のタイムである6時間30分とそれほど変わらない。2年前は相当無理をしたということになる。今回は 負荷が大きい時にはパワーを抑えたから、身体的な疲労は当時より軽い。

 毎度お約束の能登島行きバスに乗る。これで3度目だが、飽きない。右も左も海の能登島大橋を渡り、まだ 手付かずの森が多く残る能登島に渡ると、何かとても開放された気分になる。自転車で苦労して来た甲斐が あるととても感じる。

 カーブありアップダウンありの道を走り、能登島水族館へ。ここも何度見ても飽きない。入場料1320円が激安に 感じられるほど見るものが充実している。展示を見る前に、エネルギーを使い果たした体に補給してやることに した。800円でうどんと握り飯、焼き鳥が出てきた。たいがい動物園や水族館などでは飲食代がやたら高いが、 ここは反対に安値でたらふく食べさせてくれる。半日自転車をこぎ続けた体を満たすことができたのだから
大したものだ。

 腹をいっぱいにして展示へ。入ってすぐの円形大水槽には多種の魚が泳いでいる。中には体長1mを越えて いそうなやつもいる。今まで意識してこなかったが、ほとんどの魚が時計回りに泳いでいる。ひねくれて逆行 しようにも、水流に逆らって泳ぐことになってエネルギーを余分に使ってしまうからだろうか。水槽の底を泳ぐ カレイはともかく、皆同じ方向に向かって泳いでいた。

 人の手に群がってくる珍魚、ドクターフィッシュは何度見ても面白い。人の手に自ら寄ってきて手の角質(アカ)を 食べる魚など、他にいるのだろうか。本名はガラ・ルファといい、トルコが原産らしい。皮膚のをなめている(?) のか、ひげを盛んに動かしている。くすぐったい。

 その他様々な生物を見た。斜め上45°を向いて群れで静止している魚、3匹仲良く並んで微動だにしないハゼ、 音に順応するタイなど。ここで語りつくせないほど見るものがある。実際に行ってみるべし。

 えさを与える時間やらイルカ・アシカショーが30分おきにあり、こういったイベントを見ながら行きつつ戻りつつ 展示を見ていけばあっという間に時間か過ぎた。やはり能登島水族館の見物には半日は確保すべきだ。この日は 平日だったから混雑しなかったが、休日はもっと賑わうのだろう。

 今回初めて見るのは新しいイルカプール。かつてトンネル水槽となっていた水槽にイルカが入った。トンネル 自体も長くなった。22mという長さは日本のトンネル水族館の中では最長の部類らしい。ここの中でしばらくイルカを 見ていた。イルカがまるで空を飛んでいるように見えた。日が差し込んで波が立つと不思議な感じがした。

 さっき書いたイルカ・アシカショーは何度見ても面白い。前回行ったときと同様、2度見た。今回は10月中だった こともあって「イルカ・アシカの秋の大運動会」というテーマでやっていた。アシカもイルカも人間の指示が分かる ことからも、哺乳類は全般に我々が思っているより高い知能を持っているのかもしれない。さらに言えば、彼らは ロボットでもできない動作を簡単にやってのける。アシカだと鼻先にボールを乗せながら歩く、イルカだと急旋回や 大ジャンプ。自然界には人間には真似できないものがまだまだたくさんある。ショーに話を戻して、ショーは2回 観たが、生き物である以上行動は毎回一定でない。的当てで命中させることもあれば外すこともある。

 盛りだくさんの能登島水族館は夕方5時で終わり。和倉温泉に戻る最終バスに乗る。もう10月だから少し寒く、 そして暗い。日はかなり傾いている。バスは海のすぐそばの道を走ったと思えばすぐに山に入ったり変化に 富んだ車窓を見せてくれる。

 日がほとんど沈んだ頃に能登島大橋を渡り、和倉温泉に着く。ここで旅館のチェックイン。平日なのでここも人が 少ない。自転車で来るアブノーマルな(?)我々も、すっかり常連客である。これで筆者は3回目。客が少ない からか、2人のためにはどう考えても広すぎる部屋だった。この部屋は本来4人以上だろう。平日だとこんな 特典もある。

 腹が減っていたが、まず温泉に行った。今年は前回のように足が故障寸前までいくことはなかったが、次の日の ことを考えれば疲れを十分取ることが最も重要。和倉温泉の源泉は80℃以上でナトリウムやマグネシウムが多く、 なめるとしょっぱくて苦い。また、塩分のために体がよく温まる。前回まではずいぶんと熱いと感じだが、今回は それほど熱くなかった。源泉に混ぜる水の量を増やしたのだろうか。我々は1時間ほど大浴場にいた。

 幾分疲れを落としたところで待ちに待った晩飯。能登の海の幸がどっさり出てきた。今日ここまで 来るのに随分エネルギーを使ったから、格別な味だ。これだけ食べられればもう今日は寝てしまっていい。 この晩飯についても言葉では書ききれない。ぜひ今昔振舞に行ってみるとよし。

 食べて腹が落ち着いたところで、露天風呂に行く。飯前の大浴場は屋内だが、こっちは外。大浴場と 同じく、我々の入浴中は他の客がいなかった。広い温泉を我々だけで独占できて、いい気分。これも 平日の特典だろう。

 もうこれで十分に湯につかった。あまり長い時間入っていると逆に疲れてしまうのでほどほどで 切り上げた。もうこれで寝るだけだ。2人で泊まるには広すぎる部屋で、ぐっすり寝た。

 次の日の朝、8時ごろに目を覚ます。部屋の大きな窓からは七尾湾と能登島が見える。こんな景色を 目の前に朝を迎えられられるとは、とても気分がいい。朝飯もまたこの特大のスクリーンの前だった。 昨日の疲れは嘘のように抜け、これで金沢まで帰れるだろうと安心できた。

 宿を出て七尾駅に向かう。途中海沿いの道を走る。今まで七尾と和倉温泉の行き来には国道を 通っていたが、前述のように歩道がなく自転車にとって厳しい道だ。他に道はないのかと地図を見てみた ところ、海沿いを走る道があったので走ってみた。

 この道、いい!空は青く、海も青く、向こうには能登島が見える。もちろん車はろくに来ないし、 走りやすい。なぜこの道の存在に早く気づかなかったのかと悔やまれる。

 途中でいつも通っている道に合流し、七尾駅に着く。まだ朝10時で帰りまで時間はあるが、3年前の ように穴水への北上は控えて七尾と和倉温泉を往復することにした。運転台横から前面展望を見るのは、 ひと駅5分足らずでも楽しい。ローカル線だとなおさら。

 ちょっと早いが七尾食彩市場で昼食。簡単に安く済ませようと思っていたが、それなりに手ごろな値段で 寿司があったのでそいつを食べた。これもまたうまい。帰りの65kmを走るための気力も体力も十分に補給できた。

 12時半、金沢に向けて出発。前日の晩、天気予報では風向きは南だと言っていた。行きも帰りも逆風 なのかと気が滅入っていた。七尾の市街地を出るまではそれほど風は強くなかった。

 町を出て周囲が開けると、逆風が無視できないほど吹いていた。ああ、帰りも逆風か・・・いや、ここで めげてはいけない。和倉温泉に行けただけでもいいと思ったほうがいい。こうなったら、多少スピードが 落ちても長い時間自転車を漕いでいられる形を見つけよう・・・そう思って試行錯誤し、最終的にギアを 一番重くして立ち漕ぎをし、ゆっくり回すフォームに落ち着いた。立ち漕ぎをすると当然空気抵抗は大きく なるが、力の入り方の具合からか脚への負担は最も小さくなった。走行時速は平均15km/hといったところか。

 1時間以上も地に足をつけず、回し続けた。七尾から22km進んだ。これで1/3を消化。まだ1/3。体は疲れている。  温泉その他諸々の効果で、距離の割には疲れていない気がした。とにかく、金沢へ向けて走り続ける ことだけを考えた。

 途中休憩を挟みつつ、行きと同じ道をたどった。免田あたりから国道159号から分かれる県道59号を進む。 県道59号は行きだと長くてゆるい上り勾配の後に急な上り勾配となるのだが、帰りはその 逆で急な勾配を上らなければならない。残り40%のところでこの坂はきつい。思わぬ盲点だ。国道をそのまま 進むことで、歩道がせまくて危ない思いをするよりはいいのかもしれないが。

 行きと完全に同じルートをたどるなら横山駅の手前のY字路を右折するのだが、まっすぐ進んでみた。 こっちの道は徐々に山に入っていった。夜だと真っ暗になりそうだ。道路の状態からして、最近開通した ばかりの道らしい。山なのでいくらか起伏がある。下りは楽だが上りはつらい。疲労感がある脚をさらに いじめてくる。

 なんとか山道を抜け、開けたところに出てびっくり。先の道は再び山道になっている上、坂が急すぎる。 この状態であれを上る力はない。仕方がないので右に曲がる。この道のはるか先は内灘砂丘で丘のように 高くなっている。そこに家がたくさん並んでいる。不思議な風景だった。ここを少し先に行くと宇ノ気あたり に出るような気がした。予想は当たり、宇野気駅に至った。ここから再び、行きと同じルートを辿る。

 相変わらず風は吹き続けているが、出発時よりは弱くなっている気がした。最初に編み出しだ低回転 立ち漕ぎ体制はなんとか保っている。坂道だとサドルに尻を落として脚を休ませたりした。

 七尾線沿いをしばらく走り、津幡に至る。津幡駅の先からかつての国道159号に合流するが、疲れた体に 車と戦う気力はないので、国道は通らず裏道を通ることにした。裏道と書くと出発前からその道を知っていた ような感じがあるが、実際はその時のカンでこの道をずっと行けば金沢に行けると選んだ道がたまたま国道に 対する裏道のようだったということ。この道は生活道路のような感じだった。

 どこからか行きに通った道と合流し、森本を通過。そのまま国道159号と合流。この辺からだと国道も 走りやすい。そのまま速めに走っていく。

 兼六園下交差点を通り、お堀通りを通り、そして自分たちが住んでいる金沢市郊外の某所に着いた。この 時点で午後5時半、七尾出発からほぼ5時間で65kmを走った。評定時速は65/5=13km/h。もう少し速い気が した。スピードはともかく、今回は自転車のトラブルはほとんど発生しなかった。天候不順で途中足止めを 食らうこともなかった。移動に関しては3回目にして初めてトラブルなしということになる。

 ただ、課題も残った。まず、行きも帰りも大型車に悩まされた。大型車に抜かれるときは排ガスを浴びる上 逆風が吹く。今回は秋で気温がそれほど高くないからいいが、これが夏だとそうなることか。国道159号の 一部区間を県道59号に迂回することで回避できた部分もあったが(これは歩道がなくて危ないというのが 第一原因)宝達志水町付近などは迂回路が見つからず、耐えて走るしかなかった。次までに代わりの道を探して おきたい。もう一つ、自転車の問題。Denkoの自転車もM氏の自転車もボロボロ。もうとっくに引退して いなければいけないやつだ。よく今回ほとんどトラブルもなしに走りきれたものだ。次に能登に行くときは 自転車の更新は必須だ。

 能登半島は何度行ってもいいところだ。時間的には和倉温泉よりも先に行けそうなものだが、逆風など 悪条件があると体力的限界のために和倉温泉が限度に思える。1回目のように条件がよければ行けそうな ものだが。次は和倉温泉だけでなく穴水や門前方向にも行ってみたいものだ。


END

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