Chinese Fantasy 〜上海紅茶館



原曲 : 「東方紅魔郷」 より 「上海紅茶館 〜Chinese Tea」 「明治17年の上海アリス」
作曲 : ZUN ( 上海アリス幻樂団 )
アレンジ : Denko ( Presence∝fTVA )
  

楽譜音源


  こんなピアノ曲ほしかった! アレンジャー、作曲家兼ピアノ弾きのDenkoとして、このアレンジについて言えと言われればまずこう言うだろう。アレンジ以来、ピアノを弾くときは必ずこの曲を2回は弾く。それほど夢中になるアレンジだ。全体的に見られる左手の打楽器的奏法、中間部の甘い旋律、後半の低音連打、1曲の中でも大きく<表情が変わる。ピアノが表現できるいろいろな音響的効果が詰まっている。演奏時間は長すぎず、短すぎない5分。演奏する上で技術的に手ごろで、かつ演奏効果の高さの故、アレンジャー本人をここまで夢中にしたのだろう。
  東方アレンジとしては2曲目、まともなアレンジ曲全体としては4曲目。もうそろそろアレンジ暦2年というのに、まだ5本の指で数えられる程度の数でしかない。しかし、いずれの曲もどんな演奏会でも演奏できる曲に仕上がっていると思っている。もちろんこの「Chinese Fantasy 〜上海紅茶館」もだ。

  ここで演奏方法のアドバイスをいくらか。

  テクニック面について、平凡な演奏力しかないDenkoが気持ちよく弾ける程度の難易度なので、超絶技巧と呼ばれるようなテクニックはなくても弾けるだろう。演奏テクニックより、リズムを体で覚えるのがネックになるかもしれない。(このアレンジを弾いたピアノサークルの後輩より) 特に10小節目からの左手16部音符のベースしゃくり上げや、39小節目の右手と左手のかみ合わせなど。クラシックにはほとんど見られないリズムなので、リズムに面食らった人はポピュラー音楽(特にポップス)のリズムを研究してみるのもいいだろう。
  左手の跳躍がやや大きかったり、両手ともオクターブが連打するところがあり、手の小さな人には厳しいかもしれないが、練習でカバーできる範囲内だと思っている。

  表現面について、冒頭で書いたとおりこのアレンジではピアノが出せる打楽器的な音を多用した。例えば、10小節目からの特徴的な左手のオクターブ分散はポピュラー音楽のドラムのリズムをイメージしている。それゆえ、Allegro energicoの部分はペダルを少なくして左手のリズムをやや強調させたいところだ。このリズムはちくちゅーが自身のアレンジ「残酷な天使のテーゼ」や「innocent starter」などで使っているものに似ている。似ているどころか、実は使わせてもらったのだが。躍動感があり、ピアノの表現としても斬新なので、かなり前から使おうと思っていた。この曲で初めて使ったということになる。
  94小節目からも左手で類似のリズムを打つが、冒頭と違って1拍目にアクセントが入る。特に94小節目と95小節目のsfz(スフォルツァンドフォルテ)が表記されている1拍目の音は、ピアノの音ではなくドラム缶をたたいたような音を出すことを要求する。具体的な演奏方法として、鋭く強い打鍵をすると意図した音が出せるだろう。
  もうひとつ打楽器的な効果として、60小節目と154小節目のsffz(スフォルツァンドフォルテの強化版)表記がある和音は、銅鑼(どら)のような音を意識している。バーンと重々しく弾くといいだろう。
  打楽器的な演奏法以外でのポイントは、82小節目からの quasi candenza だろう。テンポや強弱など指示は特に設けなかったのは、様々な表現が考えられるから。各自でおもしろい弾き方を考えてみてほしい。
  あとは、Allegro energico(速く、エネルギッシュに)の部分は、積極的に生き生きと弾き、中間部のPiu lento e espressivo(遅く、表情豊かに)や冒頭のAndante(歩く速さで)の部分は甘く切なく弾くことだ。


直前のページへ戻る

Presence∝fTVA Top