加藤賢二の背景主題による接続曲



原曲 : 「らぶデス2」 ( TEATIME ) BGMより
作曲 : 加藤賢二 ( KiA-Music )
アレンジ : chiquchoo ( Presence∝fTVA )
  

楽譜音源


 加藤賢二さんの曲とは、何とも奇妙な形で出会いました。2007年にボーカロイド初音ミクが発売されると、ニコニコ動画等にオリジナル曲やコピー曲、その他関連動画が溢れ返りました。その中の1つが、3Dゲームである「らぶデス2」のデータを改竄して3D初音ミクを作った動画。そこで私が何故かそのBGMに興味を持ったのが始まりです。暫くの間かなり興味を持っていまして、その年の冬コミの作品に小さなアレンジ曲が1曲入っていたりします。

 そして2008年の中頃、らぶデス3の制作が発表されます。その時ふと思ったのです。加藤さんの他のBGMってどんな曲だったのだろう。ネットを探して十曲程度見つけ、そして再び感嘆することになります。その勢いそのままで作ってしまったのがこの曲、『加藤賢二の背景主題による接続曲』です。

 しっかし、皆さんからは全然期待されておらずw、かつ私も“面白ければいいや”程度でそんなに期待していなかった筈なのに、まさかこんな曲が出来上がるとは思ってもいなかったですね。初演である名大ピアノ同好会定期演奏会では、かなりミスがあった演奏であったのにもかかわらず、『本当に面白い曲だった』という感想が相次ぎ、2008summer+に先行収録する運びにまでなりました。“面白ければいいや”程度が、本当に面白い曲に化けたww。最大の特徴である接続曲形式をとったこともこれに多少なりとも寄与しているかな。今になって考えると、主題の繋ぎ目であーだこーだせずに思いきり割り切った分、主題間の差異が生きて面白さに拍車を掛けているように思います。

 そしてこの曲は、私にとって大きな大きな転換点となりました。今までは“アレンジ曲なのだからクラシックより劣るのはしょうがない、それでも原曲を知らない人にも楽しんでもらえるように作ろう”という姿勢でやっていたのが、この曲を機に明らかに変わりました。

 この曲はもはや原曲を知る人の為の楽曲ではなくなっています。目指すのは純粋にピアノ曲としての魅力を前面に押し出して、もう一度聴きたい、あるいは自分で弾いてみたいと思わせられるアレンジ曲。その方向性を取ることが自身に可能である事を、そんな事を一切考えずに作ったこの曲が示した訳です。


・演奏の手引き

 左右の手の割り振りさえちゃんとできていればそんなに難しい曲ではありません。ちゃんとできていれば、の前提付きの話ですのでお間違いなく。

 怖いのはミス。音が不規則で、とにかくミスをしやすいのですこの曲。さらに似たような旋律から別の旋律へとつながっていく個所が何箇所かあったりと、演奏の際には正しい音をきちんと『思い出す』のにかなりの神経を使う曲です。

 しかしそれより、というよりそれ以前に厄介なのが、音自体の微妙な変化。演奏でミスする以前に、下手をすると譜読みの段階から間違って覚えてしまったり、暗譜していく段階でいつのまにか違う音になってしまったりするので要注意です。そして微妙な和音が多いだけに、ちょっと間違えてる程度では響きでそうと分からないのでなおさら注意。いや、作った私自身がそれで散々苦労しましたのでほんと注意。和音の中の1音だけを半音間違えたまま覚えそうになった(普通こんな事をすれば明らかに変な響きとなるのでミスと分かる)とか、或いは実際に音を間違えたまま覚えていたとか、他の曲では信じられないようなことが起きるのがこの曲です。何度も言いますが作った本人が苦労しています。

 ただしちゃんと本来の音を鳴らすと何とも表現しがたいような独特の響きが出ます。一度正しい音を弾いてしまうと以前の音には戻りたくなくなるでしょうw。他にも、例えば似た旋律で1回目と2回目で微妙に音が違う個所とかあるのですが、弾き分けるとちゃんとそれが意味を持ってきます。そしてそういうのを楽しめると、聴く際にでも俄然楽しくなってくる曲でもあります。

 さて、前作の楽譜をしっかりとご覧になられた方は気付かれると思いますが、かなり表現に関する指示を増やして実演上分かりやすくなったと思います。それでも特にスラーやスタッカートは、現実にそう演奏するのが困難なようなものも一部描いてあります。実演でその通りに弾くのは無理だとしても、描いておかないとどこの旋律が繋がっていて、どう弾いていいか分からなくなる恐れがありますので。

 余談ですが、この曲は音源を作るのに一番時間がかかりました。Finaleの最新ヴァージョンのHuman Playbackもこの曲の前では無力で、ものの見事に変なアクセントを付けてくれましたし、とにかく様々な弾き方が考えられ、どう弾かせるかで散々悩んだりしたためです。弾き方に関して敢えて少しアドバイスするなら、接続曲という形態を考えるとやはり主題ごとの差異を引き出す弾き方がいいでしょう。

 なお本格的に仕上げるとなると、聴いた感じに比べてかなり厄介な曲です。hopeなんかを事前に弾いておくと少しは役立ちます。その代わり、といっては何ですが、この曲を代替するような曲は見当たりそうにありませんし、実際に弾いていてもすごく楽しいので、その厄介さに挑む価値はあるよ、というのがこの曲を最初に弾いた私の評価ですね。アレンジャーとしてはこんな厄介な曲にするつもりはなかったんだけどなぁ…w。


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